狂気のお姫様

バシッ!!

「…っ」

「東堂!」

小田の悲鳴が聞こえたと思ったら、頬を叩かれ、口の端が切れたのが分かる。

こいつ…まあまあの強さで叩きやがったな。




そのまま携帯を奪われてしまう、


が、



「仙道さん!こいつ!電話してます!」

この言葉で少しホッとした。



「あ?誰にだ」

「えー、と、陽ちゃん?誰だこいつ」

「陽…如月か?」

仙道の問いかけに、素直に頷く。


「ぷっ、はははは!!残念だな。切れてやがる」


仙道はバカにしたような笑いを私に浴びせるが、切れたんじゃない。

切ったんだよ。



良かった。

ちゃんと陽ちゃんに電話をかけられていたみたいだ。

これであとは私の居場所を割り出してくれるはずだ。



「まぁいいさ。電話はかけるつもりだったからな」

「…」

「お前らをボロボロにしたあとに、だけどな」


仙道と一緒に、周りの男たちもニヤニヤしはじめ、こいつらの脳みそ腐ってやがるな、と心の中で悪態をつく。



ちゃんと届いただろうか。

発信できても、受信がなされていないと意味がない。少し不安になってきた。

もし届いてなかったとしたら、多少のリスクがあってもこいつらを殺るしかない。





♪♪♪



「あ?誰だ?」

ふと仙道に奪われた携帯が鳴る。






まずい。

まずいまずい。

思わず冷や汗が垂れる。

この音は電話だ。

まずい。まずいぞ。

SOSを発信した場合、かけ直してくることはまずない。音が鳴って不利な状況もあるからだ。

つまり、これは陽ちゃんではない。

ということは、非常にまずい。

何がまずいって、相手がジローさんやさっちゃんだった時だ。

この状況をどう説明しろと?

あんたらの娘が拉致られてますよって?

相手は本業だぞ。殺しかねない。

子どもの喧嘩だ。本業が手を出してくることはないだろうが、こいつらバカだから変にジローさんに喧嘩を売りそうで怖いのだ。

自分の喧嘩は自分で片付けるのが家訓なので、私もジローさんたちに助けを求めたりはしないが…、どうかジローさんじゃありませんように。



「如月か?いや、ちげぇな。登録されてない番号だ」

その言葉で少なからずホッとする。

ジンジン痛む頬に顔を顰めつつ、だったら誰だ?と考える。

このタイミングで私の携帯に電話をかけてくるとなると、私の携帯に登録されている陽ちゃんや鳴さんじゃないにしろ、関係者である可能性が高い。

それは仙道も感じ取っているのだろう。

少しの間があいて、仙道が電話に出る。



「誰だテメェ?」

相手の声はもちろんこちらには聞こえない。

電話の対応最悪だなコイツ…絶対オフィスワーカー向いてないわ、と思いつつ、仙道が話すのを静かに聞く。



すると、仙道の口角が上がった。

「あ?お前か。羽賀愁さんよ」