狂気のお姫様


「どうも、はじめまして。木島 慶太です」

「どうも…、東堂です」



ニコニコ笑っている小田の彼氏に、小さく会釈を返す。

可もなく不可もなく、無難な女代表の小田が選びそうな男だということは分かる。

しかしなんというか…、掴めない笑顔をしてるな、という印象。悪い人には到底見えないけどな。



「え、なになに。どうしたのビックリした」

「いやたまたま通りかかってさ。でも良かった。奏見と東堂さんに用事があったんだよね」

「え、なんで私と…東堂?」


これには私も首を傾げる。

私なんて数秒前に出会ったんだぞ。なんの用があるというのだ。


しかし、小田から鹿島杏奈の話を聞いたばかりなので、もしかしたら…。


「まあまあ、お茶でもしようよ。せっかくだし」

「え、うん。いい?東堂」

「うん。大丈夫」




ちなみに数メートル後ろにあるカフェからたった今出てきて、しかも小田はケーキを2個食べ、放課後のティータイムをこの上なく満喫した私たち2人に、二度目のティータイムが来るとは思ってなかったのだが…、しょうがねぇ。付き合ってやるか。



「俺東堂さんと会ってみたかったんだよねー」

「さ、さいですか…」

私についてどんな説明をしているのかは分からないが、彼氏の目が少しばかりキラキラしているのは無視しよう。


「ていうか用事あるならメッセ送ってくれたら良かったのに」

「明日でもいいかなって思ってたんだけど、たまたま見かけたからさ」



そんなカップルの話を聞きながら、一歩後ろに下がる。

友達の彼氏と3人で一緒に歩く状況に慣れてないので少し居心地が悪いのだ。


今何時だろ。小さくため息をつきつつ、ポケットから携帯を出す。

あら?陽ちゃんからメッセージが来てる。

珍しいな。普段あんまり連絡もよこさないのに。まぁそれはほぼ毎日家で会ってるからだけど。

不思議に思いながらパパッと2人の後ろでメッセージを開くと、


『空郭ってチーム、知ってるか?』


ん?くう…かく?

チームと言うくらいだから族かなんかなんだろうけど、『知ってるか?』って……全然知らない。

だが、今天と殺りあってるあの族だと思うのが妥当だろう。

いやでも知らないよ。どういうこと?わざわざ聞いてきたってことは、私と関係ある?

質問の意図が読み取れず、クエスチョンマークが浮かぶ。

…とりあえず聞いてみよう。




そう思い、返信しようと携帯を持ち直したときだった。






「連れてきました」




はっきりと、そう聞こえた瞬間、周りの気配に気がついた。

油断していた。


「…え?」