狂気のお姫様



最悪なパターンしか思い浮かばなくて、小田にかける言葉が見つからない。

私と彼氏とじゃ、付き合いの長さが違うし、彼女として何かを感じ取っている部分もあるのだろう。

あの女…本当に抜かりない。

いつ小田の彼氏に気づいて手を出したんだろうか。

いや、まだ決まったわけではないが、可能性としては充分有り得るから厄介なのだ。

あの女は何を仕出かすか分からない。

自分を守ることと人を使うことには長けていると思うが、自分への期待値と自信があまりにも大きいので、やること成すことが幼稚なのだ。


「私、東堂に弱みを握られてる設定なんだけどな」

「それまだ続いてたのかよ」

「あーあ。もう今日はケーキ2つ食べちゃお」

「それはただのデブ」

「ていうかもう、やけ食いしてくっそ太ってやろうか」

「なんのためにだよ」

「お相撲さんになるために」

「話が理解できない」

「鹿島杏奈を張り手でKOさせる」

「ごめんそれは見たい」






小田はしっかりケーキを2つ食べました。


「意外とお腹いっぱいになったわ」

「そりゃ2つも食べたらお腹いっぱいになるでしょ」

「私としたことが」

「いつからフードファイターになったんだよ」



そんなことを言いながら、カフェを出て街の中を歩いていると、


「奏見?」

聞き覚えのない声が後ろから聞こえてきて、

「え…慶太…?」

振り向いた小田の顔が驚きに変わった。



え?誰?

私も同じように振り向くと、茶髪の好青年が1人、数メートル後ろに立っている。

身長は高くもなく低くもなく普通。顔も平々凡々。



「やっぱり。奏見っぽいなぁと思ったんだよね」

「びっくりした…」

「間違ってたらどうしようかと思った」

「よく後ろ姿で分かったね」


小田のことを下の名前で呼ぶということは、かなり親しい証拠。

いきなりの知らない人の登場に動揺するが、男の着ている制服が西城だと気づいて合点がいった。


「彼女の後ろ姿、見間違えないでしょ」



こいつ、小田の彼氏だ。





「えーっと…、ということは、隣の子は東堂さん?」

やっぱり。

私を知っているということは小田の彼氏で当たりだろう。

チラッと小田に目配せをすると、小田は小さく頷いた。


あぁもう…。

本当に、タイミングがいいのか悪いのか…。