狂気のお姫様

「なぁ東堂」

「ん?」


放課後。

最近、彼氏と帰ることが少なくなったのか、予定が合わないのか、小田と帰ることが多くなったので、今日は2人でケーキを食べに来ている。

しかし、甘いものが目の前にあるのに、小田は珍しく神妙な面持ち。


そういえば今日はずっと何かを考えている様子だったし変だった。あの小田が授業中に寝てなかったのだ。

天地でもひっくり返るのかと思った。

明日は絶対槍が降る。間違いない。




「あのさ」

「うん」

「私の彼氏がさ」

「うん」

「こないだ他の女と一緒に歩いてるのを見かけて」

「え」

「そこは別にいいよ。もしかしたらただの友達の女かもしれないし、私も蘭くんとかと歩くときもあるし」

「うん。で?何が気になるの?」


私がそう聞くと、小田は意を決したように顔をあげた。





「ただ、その相手の女が…どう見ても鹿島杏奈だったんだよ」

「は?」


小田の言葉に一瞬思考が停止する。

「鹿島?」

「うん」

「あの鹿島杏奈?」

「そう」

「私たちと同じ学校の?」

「そう」

「どういうこと?」

「分かんない。見間違えかもしれないけど…」


いや……、その可能性は低い。

小田は鹿島杏奈と同じ中学だったし、彼女は珍しい髪色をしているので見間違えることはないだろう。

鹿島杏奈が小田の彼氏と…?

ちょっとこれは本格的に…。


「…まさかとは思うけど、私も鹿島杏奈のターゲットになってたりする?」

「それ私も今思った」

「まじか…やっぱり…」


今まで私の陰に隠れていたが、小田だってあの5人とたまに話したりしているし、そもそも私と仲がいいので、鹿島杏奈側からしたら邪魔者の1人だろう。

しかし、まさかそこを…、小田の彼氏を狙ってくるとは…。


「でもまだ決まったわけじゃないよ」

恐らく小田が見たのは鹿島杏奈だろうが、小田の彼氏だぞ。そんな簡単にひっかかるか?

一緒に歩いてたのだって、たまたまかもしれない。同じ中学らしいし。


「中学のときは、小田の彼氏、鹿島杏奈と面識あったの?」

「いや、ないと思うけど、鹿島杏奈有名だったからな。知ってはいると思う」

「そうか」

「でも珍しくメッセージの返信もないし、嫌な予感しかしない」

そう言い、真っ黒な画面をヒラヒラと見せる小田はどこか空元気に見える。


「いつ見たんだ?」

「昨日。だけど最近一緒に帰ってないし、全部それが原因なのかも」

「直接聞いたりはしないのか?」

「そうだな。聞けばすっきりするんだろうけど…、なかなかね。聞くには勇気がいるわ」

「そっか」

「とりあえずはまぁ、彼氏からの返信を待ってるよ」

「そうだな」