「にしても雑魚だった」
「こう毎日毎日雑魚ばっか集めて来れるもんだよな」
「喧嘩しか脳がないのに弱いって最悪」
こいつら口悪いな。
喧嘩を売られるのはいつもだし、相手にするかしないかは自分たち次第。
そんな日々を過ごしてたのに、今回は変だ。
というのも、長すぎる。
普通は、喧嘩を売ってきて買ったらそれっきり。買わなかったら、性懲りもなくまた売りに来るのだが、こんなに長い間付き纏われることはない。
それにここ最近、こいつらの動きが変わったように思える。
だから誰かに情報を聞き出そうと思ったが…使えないのならしょうがない。捨てだ。
「理由はどうせ大したことじゃないんだろ」
鳴の言葉に頷く。
言わずと知れた『天』の名前。そしてその人数に比例しない強さ。
確かに潰したら大手柄だと、バカ共は思うだろう。
どうせ喧嘩をふっかけてくる理由なんてそんなものだろうから聞き出そうとも思わない。
が、こんなに付き纏われていてはたまったものじゃない。プライベートという言葉をこいつらは知っているのだろうか。
「でもなーんか、最近動き変わったよな」
「あぁ」
「んー、誰か探してる…みたいな?」
「あー。それは分かるかも」
「族が頭使ってんじゃねぇよ」
「それは偏見」
「それによー、喧嘩ふっかけてくるだけならいいけど、なんか最近つけられてるんだよな」
「俺もだわ」
「全然隠れられてないけどな」
「俺は見つけに行くスタイル」
「敵で遊ぶな」
「だけどよー、つけられるって嫌だよな」
「撒くのも面倒だし殺るのも面倒だし」
「正面きって喧嘩売られるほうがマシだな」
そう、真正面に喧嘩を売ってくる奴ばかりだったので、あとをつけられる、ということに慣れていない。
つけられるなんて今までなかった。
俺らを見張って何かを探ろうとしているのは明らか。
やっぱり誰かを探しているのか?
…となったら誰を?
夕の言葉に考えを研ぎ澄ませるが、天はこの5人。誰を探すというのだ。
「…まさか」
「ん?」
俺の言葉に4人の目がこちらに向けられる。
いやそんなはずは。
だってあいつは関係ないし。
そう思うが、俺らと関係がある奴と言ったらあいつしかいない。それに破天荒なあいつのことだ。逆に何かをしでかしている可能性もある。
「どうしたんだよ陽介」
夕の言葉にため息をつく。
もはやこいつしか思い浮かばない。
「うちの子かしら…」
おかん風になったのは見逃してほしい。
【side end 如月陽介】
