狂気のお姫様

【side 如月陽介】




ガスッ

「テメェ!!!この野郎!!」

ゴンッ

「ぶっ殺してやる!!」

バキッ



物騒な言葉を叫びながら、次から次へとわいてくる雑魚たちに嫌気がさしている今日この頃。


「もー、疲れたー。帰りたーい」

後ろでサボりながらぶーぶー悪態をついている夕に『働け』と視線を送りながらも、目の前の敵を最速でしずめる。


「こいつらまじで暇なのかなー」

「暇だから来てんだろ」

「俺ら暇じゃないのに」

「俺らは暇を持て余すのに忙しいからな」

「帰りてぇ」

「お前はまず働け」

「それは面倒なんだよな」

「この野郎」



バキッ

こんな話をしながらでも捌けるということは、言わずもがな雑魚。本当に雑魚。

こんなのが暴走族なのかと思えるほど。

まぁしかし、送り込んできているのは下っ端中の下っ端だとは思うが。

それにしても張り合いがない。

大体は西城の連中だが、どいつもこいつも虚仮威しすぎる。そろそろ、俺らにどれだけ向かってきても歯が立たないということを自覚してほしい。学習能力がないのだ。


「あ、蓮ちゃん帰ってきた」

夕が指さした方を見ると、返り血で頬を染めた蓮が、この下っ端の中でもリーダー格の男を引き摺っている。

あれはまた派手に殺ったな。



「おかえり〜」

「おう」


今日も今日とて敵がわんさか来たのだが、場所が悪く、路地裏と狭かったため、散り散りに別れたのだ。

後ろから愁と鳴もだるそうに歩いてきているので、あちらにいた奴らは全部殺ったみたいだ。



バキッ

こちらも今殴ったこの男で最後なので、今日の仕事はこれで終わりか。


「まじで疲れたー」

「夕お前ほとんどサボってたろうが」

「サボるのに疲れた」

「ふざけんなよ」

「エコ運転大事じゃん?」

「そもそも稼働してなきゃエコ運転じゃねぇんだよ」


こいつは本当に喧嘩に至っては面倒くさがりすぎる。いつもいつもサボるタイミングを見計らっている。1人のときでさえサボろうとするのだから逆にすごい。

1番好戦的に見えるのに、そこは意外だ。




「で?収穫は?」

鳴が壁の横に置いてある木箱に座ると、愁は壁にもたれて目を瞑った。



「このリーダーっぽい男、何も吐かないぞ」

「そいつ喋れる状態?」

「喋らないから殴ってたらこうなってた」

「蓮ちゃんそれ拷問っていうんだよ」


血まみれで蓮に引き摺られてきた男は、もはや意識が朦朧としているようで、あてにはならないようだ。