狂気のお姫様


キ-ンコ-ン……カ-ンコ-ン…

放課後の鐘が鳴る。

いつの間にか最後の授業は終わっていたみたいだ。



「さて、また働くか」

鳴さんが両手を上げて伸びをする。

放課後も彼らは忙しいみたいだ。

「また喧嘩ですか」

「そんなとこー」

「元気ですね」

「だってあっちが売ってくんだもん」

鳴さんって意外と好戦的なのかな。

「俺は帰る」

「ちょちょちょ、あなたも行くんだよ愁くん」

「えー」

「『えー』じゃないわ」

「律、パワハラされる助けて」


そう言うと、愁さんはぐぃーっと私の服を掴んで抱きついてくる。


「ちょ、なんですかもう」

銀色の髪の毛が首に当たってこそばゆい。

「こら!また律ちゃんに抱きついて!!」

「面倒」


余程行きたくないのか、引っ張る鳴さんに抵抗するように私に抱きついている。



「うわ、この子まじで行かない気?力強っ!」

「律が行くよ」

「急に売る」

「律ちゃん来てくれるならいいけど」

「のるな」



どいつもこいつも私を戦場に向かわせようとするんじゃないよ。

「そんな大事な喧嘩なんですか?」

「んー、別に大事ではないけど。いつまでも追いかけてくるから手っ取り早く潰しておこうと思って」

「粘着質なファンですね」

「いやほんとだよー。女の子なら大歓迎なんだけど」

それは懲りろ。

「族かなんかですか?」

「多分ねー」

「どうせ大体西城だろ」

「え…」



愁さんの言葉に少しだけ思考が止まる。

「どうした?」

西城って…、まさかな。

ただなんか、なんか分かんないけど嫌な予感がするんだよな。

こないだ蘭も何か感じたみたいだし。


「律?」

「んー…。関係ないとは思うんだけど一応言っときます」

ホウレンソウ、大事だからね。

一応。



「小田の彼氏、西城なんですよね」

すまん小田。お前の彼氏の居場所、吐きました。

今頃帰ってるであろう小田に、心の中で手を合わせるが、ホウレンソウ大事。うん。何度でも言う。ホウレンソウ大事だからね。


「ふぅん…」

愁さんは少し何かを考えたあと、鳴さんに目配せをした。

それはほんの一瞬で、瞬きしていたら見逃していたほど。



何か…思い当たる節が…ある…?

「小田に、気をつけろって言っておいて」

愁さんはパッと私から離れると、私の頭をポンポンと撫でる。


「え、気をつけろって…」

「万が一があるかもしれないからさ〜。あの西城だし。その中でも族が関係するし。小田ちゃんに被害は出ないと思うけど。一応ね?」

鳴さんはそう笑いかけてくれるが、『気をつけろ』なんて言われたら不安になる。特に小田が。




あぁ、私の不幸体質、今回は発動しないでくれよ。