狂気のお姫様

「ちょっとちょっと。なんでお姫様抱っこしてんの。俺の律ちゃんに」

「あんたのじゃないですけど」

「え。ひどい」


『え』じゃねぇよ。

ポケットに手を突っ込み、ダルそうに歩いてくる金髪もとい鳴さんに冷たく言葉を返すと、白々しく泣き真似をする。


そしてだ。

「いやほんと、愁さんも下ろしてくださいってば」

「えー」


『えー』じゃねぇよ。

こいつらほんとに…。




愁さんの手が緩くなった隙にシュタッと地面に降り立つと、


「あーあ。逃げられた」

と愁さんは悪態をつく。



「捕まってた記憶はないんですけど…」


というか、2階から人が落ちてきて、難なく受け止めたのもすごいが、それを抱きかかえたまま飄々と歩いているのもすごくないか。やはりこの男、侮れん。

こんな細いのに。




「鳴も呼ばれてたのか」

「そー。陽介から。律ちゃんが困ってるからここに来いって」

「雑だな」

「それでなんでお姫様抱っこっていう状況に至ったわけ」

「律が落ちてきたから」

「ん????どこから??????」




そりゃそうなるよな。


「いや、諸事情で2階の窓からしか出られなくなってですね」

「あー、そういうこと」

「窓の外で途方に暮れてたわけです」

「まぁ全然経緯が分かんないけどね」

「それは俺も」


経緯と言われても…。



「喧嘩売られたので、やり返してたんですけど、自分の武器に自分がやられそうになるという思わぬ失態が」

「あー、それがあの赤い毒霧ね」

「まさかこないだ俺にくれたあれ?」

「あ、そうそう」


そういえば鳴さんストーカー事件のときに霧吹き状の小さいやつあげたんだった。忘れてた。


そういえばそのまま返してもらってないな。




「…もしかしてこないだの喧嘩んときに鳴が笑いながら吹きかけてたあれ?」

「あ、そう。すっごい破壊力で引いたよな」

めちゃめちゃ使ってるじゃねぇか。

「律がつくったのなら納得」

「え、解せないんですけど」





そんなことを言いながら3人仲良く校舎に入るが、最近よく外に出ている(らしい)この2人が学校に来ているのも珍しい。

というのも、最近他の学校の人たちと交戦状態らしく、あまり校内にいないのだ。

ほら、こないだ私がこいつら(主に愁さん)に屋上に連れていかれたときも喧嘩のあとだったし、何かと忙しい様子。

男子って元気。




「なんか律ちゃん見てると癒されるわ」

「こないだからなんなんですか鳴さん」

「なんなんだろ。俺の癒し」

「きも」


サッと愁さんの後ろに隠れると、鳴さんは「ひどい…」と言いながらまた泣き真似をする。


「最近いそがしいから癒しを求めてるんだよ。いいじゃん見るぐらい」

「愁さん、あの人変態です」

「それが代名詞みたいなもんだからね」

「2人してひどくない?」

「私はそれ相応の対応をしているだけです」

「それはそれでひどい」