狂気のお姫様

どちらが来ても大差なかったが、銀髪が来てくれるとは思わなかったので、足を投げ出しながらも一応ペコリと頭を下げる。


「こんにちは…」

「まじで何やってんの」

そんな微妙な顔されても。

「ちょっと…正規ルートで出られなくなりまして」

「鍵閉めたの?」

「閉められたと言いますか…」

「泣いてんの?」

「思わぬ二次災害がありまして」

「二次災害…?」

「目にしみてしみて涙が止まらないんでこれは気にしないでください」

「は?」

もはや自分で自分を泣かしていると言っても過言ではないけどな。


「え…、それ中どうなってんの」


愁さんの言葉にチラリと後ろを向くと、中はほんのり赤く染まっていて、叫び声や呻き声が聞こえる。

リアルバイオ●ザードだ…南無三…。

ちょっと吸った私でさえこうなってるんだから中はもう…考えるのはやめよう。



「とうとう殺した?」

「今までもこれからも殺しません」

縁起でもないこと言うな。


「で?」

「…」

「状況も聞かされず陽介にここに来いって言われた来たんだけどさ」

「はい…」

「で?」

「助けてください…」


完全に天である彼を見下している格好だが、心にはちゃんと誠意を込めている。はず。

だって無駄な動きしたら落ちるもん。しょうがないよね。



「はい」

「…え」

真下の愁さんは、両手を少し開いている。


「…」

「…」

「まさか落ちろと?」

「当たり前でしょ」

ですよね。



2階から飛び降りるのはさすがに怖いものがある。

下に人がいて構えてくれているとしてもだ。

ていうかこのまま落ちると愁さんの顔面踏みそうだし、膝入れてしまいそうだし、もはやそこが不安。


「何怖がってんの。今更」

「いやいやいや命の危機が」

「死なせるわけないでしょ」

あんたを殺してしまわないかが不安だよ。





「あ、ちゃんと受け止めたいから背中から落ちてきてね」

「無茶言う!!」

それだと確かに愁さんを踏む可能性は低…いや怖いわ!もっと怖いわ!!簡単に言ってくれるなこいつ!!


「じゃないと落とす」

「さっき死なせるわけない的なこと言ってましたよね?」

「…」


無視だ!!!!!

必殺無視出ました!!!

それどころか『早くしろ』と表情に出ている。ていうか顔に書いてある。なんて薄情なんだ。乙女の気持ちも考えやがれ。

が、そんなこと通用しない相手だと分かっているので、大人しく背中から落ちようと体勢を変える。



「あ、パンツ見えた」

「変態!!」

「白」

「ほんとに見えてるじゃねぇか」