狂気のお姫様

「うわ、地獄絵図」

窓の外から教室の中を見ているのだが、これはちょっと自分史上最強の地獄絵図かもしれない。

赤い霧が教室に充満しており、6人の男女がのたうち回っている。

紙ヤスリが絶大な効果を発揮したらしく、強力な唐辛子エキスは傷口にとてつもなくしみるだろう。


「ギャァァァァァアッ!!!」

窓の外なのにこんなにも鮮明に叫び声が聞こえるものなのだな。

ちょっと目を向けてられないので、そのまま窓の外のヘリに座って足を投げ出す。


「いやー。どうやって降りよう」

悠長に奴らを眺めている場合じゃなかった。

ここは2階。

窓の外に出たものの、あるのは30cmぐらいのヘリのみ。

近くに木でも植わってたら飛び移って地面に降りられたと思うが、見るからに何もない殺風景な校舎裏。

最悪だ。

そしてだ。


「しみる…」

予想外に早く起動したあの簡易スプリンクラーのせいで、私にも軽く被害が出ている。

とは言え少ししか吸ってないので涙が出るくらいなのだが、さっきから涙が止まらない。毒霧がすぎるんだよまったく。



「はぁ…」

教室の中には絶対戻れないし、かと言って助けを待っていてもこんなところ誰も通りやしない。


ということで、



「陽ちゃんたっけてー」

《はぁ?》

「2階から降りれない」

《状況が掴めん》

「迎え来て」

《はぁ?てかお前泣いてね?》

「泣いてるすごく」


涙が出るせいで自然に鼻水も出てくるので、ズビズビ鼻を鳴らしながら陽ちゃんに助けを求める。


《おま…今どこだよ…》

「えー、2階の教室の窓から出たとこ」

《いつから自殺志願者になったんだ》

「来てくれなかったら陽ちゃんを呪い殺す」

《こわ》


どうせ暇してんだろ。暇じゃなかったとしても頼んでたけど。

投げ出した足をぶらぶらさせながら袖で涙を拭う。


が、思いのほか陽ちゃんは暇じゃなかった。



《俺今外いんだよ》

「えっ」

《諸事情があってな》

「陽ちゃん学校いないの?」

《おー》

「じゃあ私に死ねってこと?」

《考えが飛躍しすぎてんなお前》


なんでこんな大事なときに学校いないんだよクソ陽ちゃんめ。ていうか普通にサボッてんじゃないだろうなクソ陽ちゃんめ。

と思ったが、遠くの方で聞こえてきた怒号らしき声に、喧嘩中だと想像がつく。


「こんなときに…誰だ相手は。私がぶち殺してやる」

《2階から脱出できてから言えよ》

ごもっとも。