狂気のお姫様

「いでぇぇええええ!!!」

あまりの悲鳴に、顔が引き攣っている周り。




「ぶはっ!!笑わせないでよ〜」

思わず笑ってしまう。

だって面白いじゃん。めちゃめちゃ叫んでんだよ。

これで笑わないでいつ笑うのか。



まぁでも、殴られるとか、蹴られるとか、そりゃそういうのも痛いけど、こう、なんというか、皮膚が削られる痛みって、言い表せないくらい痛いよね。

かわいそ。



「あいつ…え、やばいんじゃ…」

やっと自分たちの置かれている状況に気づいたのか、女2人は隅の方で縮こまっている。





「まだ顔しか削ってないのに大袈裟だなぁ」

腕のヤスリを見ると、男の皮膚がべっとり。

「気持ち悪」

思わず顔を仰け反ると、その瞬間倒れていた男が私に拳を飛ばしてくる。



「あっぶなぁ」

「このっ…アグッ!!!」


男の腕を掴みそのまま反対方向に折ると、骨が軋む音がギシッと聞こえる。

「いっ、おわ!!!」

体重差があるのであまり使わないが、掴んでいる腕を肩に置き、箒を離してそのまま背負い投げた。

ガラガラガッシャ--ン!!!

私の後ろは椅子やら机やからが積み重ねてあったので、勿論それらに突っ込んだ男。

背負い投げするときにヤスリに触れたのか、腕は赤く削れていて可哀想なことになっている。



「大人しく!!しろっ!!」

「おっと危ない」

私が離した箒を拾ったらしく、先程蹴りを入れた男は素早く突いてくるが、私のスピードには追いつかない。


「うわっ!!」

掴んだ箒の柄をグッと引っ張ると、男がそのまま体勢を崩してこちらへ倒れ込んで来たので、思い切り蹴りを入れる。



「ヴッ!!!」

違う方向からいきなり力が加わると、体には相当な負荷がかかる。

今ので首イッたな。





「あーあ。手応えないなぁ」

箒を縦に戻し、床にトンッと突いて女たちを見据える。



「ヒッ」

小さく悲鳴を上げた女は、ガタガタと扉を揺らすが、扉はうんともすんとも言わない。



「なんなのよ!!!」

「は?」

「なんなのよあんた!!!!」


未知の生物を見たような目で私を見るが、私からしたらお前らが未知の生物だ。


「なんなのよって言われてもなぁ」

「おかしいじゃない!!こんなっ…!」

「こんなに強いのがおかしい?」

それは先入観というものだ。

「そもそも、一応天と仲良いとされてるんだから、その私が並外れて強くてもさほどおかしくはないだろう」

陽ちゃんの幼なじみだしな。

「まぁ、私が強いか強くないかはどうでもいいんだよね」

「ヒッ…」

「もうほんと、私なんにもしてないのにさぁ。次から次へと敵は湧いてくるし」

「こ、こないで…」

「鹿島杏奈の悪口言ってるとか意味の分からない嘘を吹聴されてるけど、そんな陰湿なことする無駄な時間ないっての」


最大限に殺気を放ち、座り込んでいる女の顔すれすれで壁を蹴る。


「ッ!!」

「頭悪いんだよな。どいつもこいつも」


女の髪を掴みあげると、醜くぎゃあぎゃあ泣き喚くが、さっきはあれだけ自信があったのだからもうちょっと反抗してほしい。

つまらないな。



「この!!!!」

ふと隣の女が殴りかかってこようとするが、

バシッ

腕を振り落とすとそのまま床に這い蹲る。

女って軽い。


「いったぁぁぁあ!!!」

「あらやだ、ごめーん。女の子なのに顔の皮膚削れちゃったぁ」

全然ごめんと思ってないけど。