狂気のお姫様

「東堂急げよ。売り切れるだろうが」

「そうだぞ律。足動かせ」

「はやすぎるんだよあんたたち」


前を歩く…いや、もはや競歩状態の2人に急かされ小走りでついて行くが、こいつらの足が長すぎてげっそりしている東堂ですどうもこんにちは。


「はやいってば」

「クレープ愛なめんなよ」

「どの食べ物に対しても同じこと言ってるけどな」

「は?なんて?なんか言ったか?」

「耳悪い。てか早い」


今は放課後。

新しくできたクレープ屋さんに行くために、早歩き、いや、競歩を頑張っているところだ。

こいつらの食欲はどうなってるんだ。

そもそも新しいお店ができた、という話を入手するのが早い。さすが高校生。そしてデブ。

すっかり私たちと行動をともにするようになった蘭は、一緒に帰ることはあまりなかったが、小田が久しぶりに一緒に帰れる日だということで、3人で寄り道をすることになった。


「かなみん!あれだ!俺先行く!」

「でかした蘭くん!並んでて!」


体力おばけの蘭は先にお店へ走って行き、息も途切れ途切れの小田は、もうヘトヘト。そりゃ校門出る前から競歩だったもんな。


「クレープ食べる元気あんの」

「なめんなよ東堂。疲れた体にクレープが染み渡るってもんだろ」


アホなのだろう。

うん、総じてアホなのは分かっていたが、アホなのだろうな。

ただ、こんなことでマジになれる2人の脳みそが御花畑すぎて今日も平和だ。






「うっま」

「どんなふうに」

「あのなー…、うまい」

「わかる、うまい」


食リポが超絶皆無な2人を横目に、チョコバナナクレープを頬張る。

確かに、人気のお店ということもあり美味しい。

店内がいっぱいだったのでテイクアウトにして、少しひらけたところのフェンスに腰を下ろす。




「あ、あれ」

「?」

口元にイチゴソースをつけたホラーな蘭が、ふと道路の向こう側を指さす。

視線をそちらにやると、いかにもガラの悪そうな男たち。


「西城だ」

「あ、ほんとだ」



西城高校。

うち城ヶ崎高校と負けず劣らずやばいと噂の不良高校である。

城ヶ崎高校とあまり近くもなく遠くもないところにあり、うちの生徒と喧嘩することもしばしばあるようだ。