狂気のお姫様

天と私の関係が確実となった今、天を潰すためにか弱き私を狙うのは当たり前だろう。

そう、か弱き私を。


「大人しくしておいてくれよ?東堂律」


ということで、

拉致られた。

間違えた。

拉致られてみた。




東堂律、今、体育倉庫にいます。

「さ、羽賀に連絡してもらおうか」

目の前には5人ほどの男たち。ネクタイの色で3年生だと分かる。

なるほどな。私を使って愁さんをやっつけようという魂胆か。

埃っぽい場所に噎せそうになりながら呑気にそう思っていると、リーダー格の男が「携帯出せ」と手を出してくる。





さて、そもそも何故拉致られてみたかって?

この人たち多分、いや絶対バカなんだけど、まあまあ人がいるところで話しかけてきたんだよ。

私もちょっとビックリした。拉致ってもっと人気の少ないところで行うものだと思ってたからさ。

さすがにそんな状況の中、返り討ちにするわけにもいかないので、暇だったしついてきてみたわけだ。

まぁそれはいいだろう。

しかしだ。




「愁さんの連絡先知らないんすけど」

ごめん。まじで知らないんだよね。

「はぁ?嘘つけテメェ!!」

そんな怒号を浴びせられても知らないものは知らない。

どうぞ私の携帯を見てくれという話だ。


「一応鳴さんと陽ちゃんのは知ってますけど」

そう言った私に『お前まじで知らないのか?』と驚く男たち。

「え、こいつ、羽賀のお気に入りじゃねぇの?」

「そうだろ…。こないだ殺られた奴が一緒にいたって言ってたぞ…」

こないだ殺られた奴…、あ、もしかして私が踏んでしまった人たちかな。

しかしだ。ただ一緒にいたからと言って、私が愁さんのお気に入りかどうかと聞かれたらそこは結びつかないだろう。

「チッ…しょうがねぇ。如月に電話してもらおう。どうせ一緒にいるだろ」

あー、ここで陽ちゃんを選ぶのか。まぁ鳴さんのほうがめんどそうだからいいんだけどさ。

一応言われるがままに陽ちゃんの電話番号を出すと、携帯を奪い取られる。


プルルルルルル…

《どうしたー》

スピーカーにしたのか、陽ちゃんの間延びした声が鮮明に聞こえ、後ろの方でも誰かの話し声が聞こえる。

「おい。てめぇらの大事な姫は預かったぞ」

話し出したのはリーダー格の男。

《は?誰だお前》

私とは違う声に、すぐに警戒を見せる陽ちゃん。

は、置いといて、

姫ってダサ。

「お前らの姫をボロボロにされたくなかったら1人で来いや」

いやダサいからやめて。切実に。頼む。

こういう人たちって、なんで人質をとるんだろう。人質をとる=自分たちの方が弱い、ってハッキリ自分で言っちゃってるのが分からないのかな。


《律》

陽ちゃんが私を呼ぶ。

男はニタニタしながら私に携帯を向ける。

喋れってことか。



「陽ちゃーん。たっけてー」

一応棒読みで助けを呼んでみる。

が、私の声でことの状況が掴めたのだろう。




《おー、あとでなー》

こいつ絶対来る気ないわ。