狂気のお姫様

「なんでみんなそんな意地悪言うの…?」

とうとう目を潤ませて泣きそうな鹿島杏奈。


本当、なんでこれが私にまで通用すると思っているのか甚だ疑問だ。




どうしたものか、と思っていたが、長谷川蓮の弟はやはり長谷川蓮だった。


「なんか嘘っぽいよなー、その顔」

「…」

「…」

「…え」


言いやがった!!

私でも言い出せなかったことをサラッと言いやがったこいつ。

「えっと…」

さすがに鹿島杏奈も戸惑いを隠せない様子。


「それって演技?」

分かるよ。分かるけど。


「いや、演技とかじゃ…」

「え、まじで?すげぇ。高校生にもなってこれぐらいで泣くの?泣き上戸?」


うんうんそうか。

泣き上戸はちょっと違うかな。

そして分かった。

分かったぞ。

性格が真逆だと、そう思わせておいて実は似ている。

うん。

ピュアッピュアなんだわ長谷川兄弟!!!!


嘘偽りがない!!!なさすぎ!!!

一見佐々木夕や鳴さんみたいな感じかと思いきや、彼らみたいに裏があるわけではない。とてつもなく純粋な目をしてらっしゃる。

素直すぎるから、悪気はないのに相手を傷つけてしまうタイプだ。




「ていうかさっき東堂さんが言ったようにあの人たちに直接聞いてよー。俺別に天じゃねぇし」

「え、天じゃないの?」

その言葉に驚いたのは鹿島杏奈。


「で、でも屋上行ってるんじゃ…」


天というブランドを手に入れたいのか、あの中の誰かを手に入れたいのかは分からないが、弟を使って天に取り入ろうとしていたのだろう。

噂では『天に入った』という情報が流れていたので、てっきり天って加入制なのかと思っていたが、違うかったみたいだ。


「え、夕さんがゲームしよって誘ってくるから行ってるだけ」

あぁ、言いかねないわ。


「そ、そうなんだ」

天のメンバーである弟に『行ってもいい』と言われれば心置き無く行けただろうが、メンバーじゃないのなら言質をとっても無駄だろう。残念だったな。


「ってあれ、今日中止って連絡きてるわ」


そう言って携帯を見る弟くんを、鹿島杏奈は一瞬恨めしそうに睨むが、すぐにいつもの表情に戻る。

しかし、天じゃないにしろ、彼らに近づくならば手始めに彼に近づくのが得策だろう。鹿島杏奈はまだ諦めていない様子。

そんなにまで彼らに近づいてどうしようと言うのか。野心家というかなんというか。小田の話によるとプライドが高いらしいが、彼女のことは一生理解できないだろう。