狂気のお姫様


あらあら、そんな顔してると腹黒いってバレちゃうよ?

が、しかし、鹿島杏奈の顔はすぐに笑顔に戻る。


「私たちも今から行こーって話してたのー!ね、蘭くん!」

「え?」


鹿島杏奈は隣の蘭という男にそう聞くが、彼は『そんな話した?』とでも言うように眉間にシワを寄せた。


「いや、俺別に鹿島さんと一緒に行くとか言ってねぇんだけど」

「ちょっとー!杏奈って呼んでって言ったじゃん!」


全然話が通じねぇ。

彼は困った顔で笑うが、全身で『面倒』というオーラを放っている。


「屋上行けるとかそういうのは俺が決めることじゃない」

あ、名前に関しては無視だ。

「えー、なんで?」

「行きたきゃ自分で行って。俺を巻き込むなよ」

「酷い!巻き込むなんてそんな!」


この茶番にはいつまで付き合わされるのだろうか。

ていうかあの顔誰かに似てないか?

この様子だと彼はたまたま鹿島杏奈と遭遇したみたいだが…そもそもこんなところに人が来るなんて珍しい。

ということは…もしかして…



「………長谷川蓮の弟?」

私の言葉に反応したのは男の方。


「あ、バレた。東堂さんでしょ?兄貴がいつも世話になってます」

「え…」

うそ。

え、どうしよう。

驚愕だ。

そしてそれが私の顔にこれでもかというほど表れていたんだろう。彼は怪訝そうな顔でこちらを見る。


「なんでそんな驚いてんの?」

「長谷川蓮の弟なのに…し、しっかりしてる…」

「え」


私の言葉を予想してなかったのか、一瞬驚いた顔をした彼は「ぶはっ」と吹き出した。


「そこ!?」

「しかも性格も明るい…」

「まぁ性格は真逆だってあの人たちにも言われたな。みんな兄貴のことどう思ってんの」

「え、岩とか?」

「岩!!!!!」


思ったことをそのまま言っただけだが、とうとう壁をバンバン叩きながら笑いだした弟君に若干引く。まじであの人の弟なのか。



「ねぇ、屋上はー?」

あ、まだいたの。

完全に存在を放置されていた鹿島杏奈は、プクッと頬を膨らませるが、中身を知っているから可愛いとは思えない。



「ねー、律ちゃんも行ったんだから、いいよね?」

今度は私に聞いてくる。

が、私は行ったんじゃなくて連れて行かれたんだと、何回言えば気が済むのか。

さすがペテン師。勝手に屋上に行きたいところだが、誰かに行っていいよと言われれば確実。文句を言われるのは自分ではない。だからさっきから『行ってもいい?』などと戯言を垂れているのか。



「知らないよ。聞いてみたら?上の人に」

ピッと指で上をさす。

私に聞かれても困る。彼らの住処なんだから彼らに聞けばいい。

いや、その前に学校の敷地だから誰のものでもないけどさ。

まあ、前に辱めにあったからなかなか踏み出せないとは思うが。


「岩!!岩!!!ぶははははは!!」

お前はいつまで笑ってんだよ。