狂気のお姫様



しかし、電話は無惨にも切られてしまった。


「いいんですか」

「んー、知らね」

「今、私のこと忘れてたでしょ」

「久しぶりに安眠できた」

無視か。



「律、飴持ってない?」

ほんとにこの人はいつもいつもいきなりだな。

「持ってなくはないですけど」

なんだかペースを乱されるのが腑に落ちなくて、変な答えになってしまう。

ムクッと起き上がった愁さんは、それをなんとも思ってなさそうに「ん」と片手を私に出す。


しょうがないな。まぁ飴を持ってる私も私だが。

今日はリンゴの飴よ、と愁さんの手に飴を乗せると、


「?」

なんだか少しだけ目が、キラキラ…、いや気のせいか。


「りんご好きなんですか」

「別に」

やっぱり見間違いか。


「好きじゃないけど」

「うん?」

「別に好きじゃないけど好き」


ちょっと意味が分からない。


愁さんは飴を口の中に入れると、またガリガリと噛んだ。


「前も思ったんですけど飴噛む派なんですか?」

「違うけど」


噛んでるじゃん。


「んー。律のせい」

絶対今適当に言っただろ。


今日も今日とて読めない羽賀愁。



「じゃ、俺行くわ」

そして自分勝手な羽賀愁。

「あ、はい」

スッと立ち上がった愁さんは、『お前は帰らないのか?』とでも言いたそうにこちらを向き首を傾げる。

が、

「あ、お構いなく」

私には私のペースが、ある、ので。

「?」

「いや、はい。どうぞ、行ってください」

苦笑いで帰ることをすすめるが、なんだか怪しんで行ってくれない。


「私には、私のペースが、あるんで…ははは」

「立てないの?」

核心つきやがる。


「いやいや、私には私のペースがっ、いだだだだ!!!」

こいつ!あろうことか!私の腕を引っ張り上げやがった!!

抵抗する気力もない私の身体は、されるがままに立ち上がってしまう。


私のあまりの痛がりように、キョトン顔の愁さん。

純粋な顔して惨いことするなこの人!!!!


こちとら、

「筋肉痛なんだよ!!!!!!!!!」