狂気のお姫様

「やべぇ。筋肉痛だ」

朝起きた瞬間、とんでもない激痛が体を襲った。

正直昨日はやりすぎた。イライラしてたこともあり、数時間は陽ちゃんとやり合っていたのだ。そりゃ体もバキバキになる。

「痛い…痛すぎる…」

ちゃんと毎日鍛えとかないとこうなるんだな、と後悔しつつ、学校へ行く準備をしたが、陽ちゃんがなんともないのが逆に腹立つ。


「なんでそんな産まれたての小鹿みたいな歩き方してんだ」

「半笑いなのが腹立つ」

なんだ。男の子の筋肉ってどうなってんだ。

奴も昨日同じだけ動いたはずなのに!!!






学校へ行くと、ある噂が囁かれていた。


「長谷川蓮の弟が屋上行ってたって?」

「そう。もしかして天に仲間入りしたんじゃって言われてるらしいぞ」

「天に仲間入りとかそういう概念あんの?」

「それは知らん」


長谷川蓮の弟が屋上に行っただの、天の人たちと話してただの、そういう噂が流れているそうだ。

私は噂には疎いので、こういうことは全部小田から聞く。

が、

「そもそも長谷川蓮に弟なんていたのか」

「いやほんとにそれ」

「そこが初耳すぎてびっくりしてるんだが」

いや、でも前に陽ちゃんがそんなこと言ってたような言ってなかったような…。

「名前も長谷川だもんな。四ツ谷さんみたいに珍しい名前だったらまだしも」

「あー確かに。小田とかな」

「それはどこにでもいるわ」


今日もいいツッコミするな小田。


「ていうか長谷川蓮の弟って」

「もう同じにおいしかしないよな」

「あれが2匹いるのやばくない?」

「手に負えねぇ」

「間違いない」

「でも長谷川蓮の弟だったら相当な美形じゃないのか?あんな美形がいたら嫌でも噂になると思うんだけど」

「確かに。今日朝から女子たちがかっこいいだのきゃーきゃー言ってたから顔はイケメンなはずなんだよな」

「なんかちょっと見てみたいよな」

「分かる」


こんな私たちでも野次馬精神は少なからずあるので、長谷川蓮の弟に興味津々。今までよく気づかなかった、いや、気づかれなかったものだな。


「どこのクラス?」

「隣の隣だよ」

まあまあ近いじゃん。本当によく気づかなかったな。


「今見に行ったら人いっぱいいるよね」

「ていうか東堂が見に行くのはやめておいたほうがいいんじゃ…」

「確かに」

「まぁ、今度は長谷川蓮の弟を狙ってるっていう噂が流れるのも面白いとは思うけど」

「こっちは面白くないんだよ」


多分、いや、絶対鹿島杏奈は接触をはかるはずだ。そこに私が行けば、またありとあらゆる言いがかりをつけてくるだろう。それはすこぶる面倒くさい。

ので、

「まぁ、この学校で過ごしてりゃいつか見れるだろ」

という結論に至る。