狂気のお姫様

家に到着し、音速で陽ちゃんのバイクから飛び降り、ヘルメットもつけたままですぐにパソコンを開く。

「早く起動しやがれ」

まったく…。パソコンにまで悪態をついてしまったじゃないか。

だが一刻を争うのだ。だって今回のフィールドはネットという世界規模のものだから。


「お前はえぇよ」

バイクを止めてきた陽ちゃんなんかフル無視で、パスワードを打ち込む。



「どうしたんだよ」

状況を理解していない陽ちゃんは、物凄い形相でパソコンを叩く私の頭から器用にヘルメットを外し、画面を覗き込んだ。


「あー…」

「どう思うこれ」

「最低」

「ね」


画面には『東堂律です!誰でも大歓迎です!』の文字と、私を隠し撮りした写真。

誰が『誰でも大歓迎』だ。ふざけるなよ。大歓迎なのはお前だろ。まぁ来るならばそれ相応に返り討ちにはしてやるが。


「もしかして…」

「あのクソ女だろうね」

「なるほどな。だから急いでたわけか」

「今日のあの3人だってこれを見て私に話しかけてきたんだよ」

「明らかに隠し撮りだろこれ」

「そんなの、あんな低脳のゴリラたちが分かるわけないじゃん」

「すごい言いよう」



1回出回った情報をネットから消すのは困難だ。だからこそ私はキレている。こんなチマチマと嫌がらせしやがって。

直子さんの事件だってそうだ。根回ししたのは奴、鹿島杏奈だろう。

しかし咎められないのは、本当に鹿島杏奈が直子さんに私を殺るように唆したかどうかが分からないから。それに、あのストーカー女とはできればもう話したくないというのが本音だ。

ボコボコにすることは簡単だ。しかし、学校の中での奴のカーストは上位。殺るならネタをきちんと揃えていかないと、こっちが不利な立場になることも有り得る。

前に返り討ちにした男女グループから頂戴した携帯の情報によると、まだ私への攻撃を企んでいる奴らが少なからずいる。その雑魚たちを一掃してからラスボスに挑むのが現状1番の得策だが…。


「それにしても腹が立つ」


今回のはちょっと私もキレるよね。

ダダダダンッとキーボードをうってうってうちまくり、サイトをハック。私の情報を削除し、その足跡から主のもとへと辿り着く。


「久しぶりに律のハッキング見たな」

「ハッキングなんて普段しないもん。普通に過ごしてりゃ」

「そりゃそうだ」

「腕がにぶってたらどうしよう」

「お前に限ってそれはないだろうから大丈夫だと思うぞ」

「本当に腹が立つ。こいつら全員にウイルス仕込んでやる」

「こわ」


容赦ないな、と口元をひくつかせている陽ちゃんはさておき、自分の情報を消すだけじゃ気が収まらないのだ。


「鹿島杏奈の携帯にも漏れなくプレゼント」

「プレゼントって言葉が似合わないほど物騒な顔してるけどな」

「あっちが先にプレゼントを寄越したからね。そりゃあそれよりも大きなもの返さなきゃ」