狂気のお姫様

今日は小田が彼氏と帰る日なので、1人だったりする。ていうかほぼほぼ1人なんだけどね。

家から学校の距離はそんな遥かに遠いわけではなく、歩ける距離ではある。が、小田にはいつも『この距離歩くとかサイコパス』と悪口を言われる。

ジローさんからの要請のこともあり、筋トレは毎日しているのだが、今日は久しぶりに陽ちゃんと組手をする約束をしているのだ。だからちょっと楽しみだったりする。


のに、

「可愛いねぇ」
「東堂さんでしょ?」
「やば、まじで可愛い」

行く手を阻まれるのはどういうことか。

そして何故私の名前を知っているのか。


「人違いです」

そう言い捨て立ち去ろうとするも、簡単には通してくれないようだ。

「つれないなぁ。昨日話したじゃん!」

「はぁ?」


お前と話した記憶なんてないけど。

その意味を含んだ「はぁ?」だったが、男たちの顔のニヤニヤは止まらない。正直気持ち悪い。


「もしかして照れてる?」

どうなったらそんな思考になるのかが疑問だ。何故私がお前らなんかに照れなきゃならない。


「いや、まじで誰あんたたち」

さすがに自分の帰路をここまで塞がれて不機嫌にならないほうがおかしい。いい加減イライラしてきた。


「まじで言ってんの?」

「まじも何もまじで誰」

イライラしすぎて自分の語彙力が崩壊している。


「は?昨日出会い系サイトで今日会おうって話したじゃん」


は?

「ひどいぜー、東堂さん。顔写真まで送ってくれたのに」


送ってないけど。いやいや。なんで私がお前らに顔写真を送らなきゃいけないんだ。ていうか出会い系のサイトというのも全く身に覚えがない。



だが、少し話が読めてきた。

これは早く帰った方が良さそうだ。


「いやそれ私じゃないですから」

「はぁ?これ絶対東堂さんでしょ?」


と言って男が差し出した携帯にうつっているのは、正真正銘自分。

しかしだ、明らかに隠し撮りだろう。休み時間中、小田と喋っている写真だ。ただ、私の顔が見えるように撮られているので、小田の顔はうつっていない。

ほぉ、なめたことしやがる。

私も、何も24時間気を張っているわけではないので、人の気配や、それこそ写真とか、気づかないことだってある。

しかも頭ゆるゆるの小田と喋っているときだ。絶対気を抜いていたと思う。

日々の鍛錬を怠るとこうなるんだな…、と修行僧みたいなことを思いつつ、ため息をつく。


「さ、行こうよ東堂さん?」

「頭わいてんのか」

「え、なに?」


ただでさえ帰り道を邪魔されて不機嫌だってのに、成りすましだと?しかも出会い系。これは大罪許すまじ。


「これ、明らかに隠し撮りなの分かりませんか?」


内心ブチ切れながら、男の携帯にコツコツと人差し指を当てて指摘すると、頭の悪そうな3人の男は携帯をガン見。


「成りすましでしょ」

だからかまってくんじゃねぇよ、と携帯を返し、さぁ帰ろう早く帰ろう、と一歩踏み出したが、


「じゃあ今から知り合えばいいんじゃん?」

全然帰してくれないじゃん。