狂気のお姫様


勿論今の声は私である。

何やってくれてんだコノヤロウ。

急に頬っぺにキスされたときの感触がよみがえってきて身震いしてしまう。


「そんな…それは…」

「直子さん、俺じゃなくてその女の言うこと聞くの?」

さっきからこいつ性格違くないか?


「違う…違う…」

ポロポロと、直子さんの目から大粒の涙が溢れ出す。

自分の好きな人が他の人を好きだなんて、誰も認めたくない気持ちは分からないでもないけど、やりすぎたね。

うんうんこれで一件落着…、


「私のものにならないなら死ねばいい」

じゃなかったね。うんうん。



「俺もうギブ」

「いけると思ったんですけど」

「演技派だったでしょ」

「キモかったです」

「ひど」

「コソコソ話さないでよ!!!!」

ごめんて。



「あーっと、アレはやばいね」

直子さんの手に光っているものは、なんとも切れ味の良さそうなナイフ。

「とうとう犯罪者つくりましたよ鳴さん」

「俺のせい?」

当たり前だろうが。


何か手はないだろうか。

そりゃ悪意を向けられてるので返り討ちにすることはいとも簡単にできるのだが、だからと言って彼女の恨みが晴れるわけでもないし、生きてる限り追ってきそうだ。

警察に通報でもしようかなぁ、と思ったが、ただの銃刀法違反、いや、殺人未遂までいけるか?しかし未成年なのですぐに出てくるだろう。


つまりは、鳴さんのことを諦めさせればいいのだ。鳴さんは絶対に自分を好きにならないと、そう認識させれば…、

「あ」

「え、なに」

「東堂律、いきます」

「え、やだかっこいいこの子」


あることをピーンと閃いた私はもしかして天才なのかもしれない。


「ちょっと直子さん、いいですか?」

「何よ…!!!あんたなんかに名前呼ばれたくない!!」

「まあまあ…もう埒が明かないので、本当のことを言います」

「はぁ?何言ってるの???」

「ちょっと来てください」


私はそう言うと、一応ナイフに気をつけながら直子さんに近づき、そっと耳打ちする体勢に。

とてつもなく神妙な面持ちで近づいたので、さすがに聞いてくれるご様子。

鳴さんはと言うと、自分が送り出したくせにちょっとハラハラしてるのはなんなんだ。


「実は…」

「え…?」

「だから…」

「嘘…そんな…」

「そうなんです。だからこのことは誰にも…」

「…そう、ね…。鳴くんのためだもの…」

「私もごめんなさい騙して」

「いいの…いいのよ…」

うんうん。納得してくれればいいんだよ。女の子同士、手を取り合って仲直りしようじゃないか。




「え、待って!!??なんでそんな和解してんの!!???」

うるさいな。