狂気のお姫様

「はははー…まぁ、私彼氏が待ってるので今日は失礼します…」

そそくさと会釈をする小田に冷たい視線を向ける。

おい嘘つけ小田コノヤロウ。さっきまで『パフェ食べて帰ろう』だの『今日はフードファイター小田』とか頭悪いこと言ってたじゃねぇか。帰りたいからって嘘つきやがって。

絶対帰すもんか、の意味を込めて小田の腕を掴むと、おもむろに外そうとしてくるが、絶対離さない。

「え、小田ちゃん彼氏いるのー?」

「はい、まぁ」

あ、この人知らなかったのか。そりゃそうか。小田とこんなことを話す機会なんてなかなかないもんな。


「へ、へぇー…」

しかし何故か顔が引き攣っている佐々木夕。なんだなんだ。

それと同時に、

ボトッ

後ろの方で何かが落ちる音がした。


「え…」

振り向くと、何故か唖然とした顔の長谷川蓮。

と、何故か廊下に無惨に落ちている鞄。


「な、なに…、どうしたの長谷川さん…」

「分かんない…」

放心状態の長谷川蓮に、こちらも戸惑いを隠せない。



「お、小田…」

「え、あ、はい」

そのままの顔でいきなり名前を呼ばれ、驚く小田。

なんだなんだ。


「お、お前…彼氏いるのか」

「え、はい」

「な、なんだと…」

「はい?」

「知らなかったぞ」

「言ってませんもん」

「な、なんでだ…」

「え、なんでって…」

「なんで彼氏がいるんだ…」

「はい?」

「…なんだと…」


拳を握りしめて恨めしそうにそう言う長谷川蓮に、私はもう察しがついており、佐々木夕に目配せをすると、佐々木夕は困った顔でコクリと頷いた。


「いや、やだって…」

「やだぞ。俺は」

あ、小田『知らんがな』って顔してる。めっちゃ顔に出てる。もはや書いてる。


「まぁ、そういうことなんで、帰ります」

「なんだと」

あ、めんどくさくなったな。


「まぁ、そういうことなんで」

「待て小田」

「なんでですか」

「なんでもだ」

「急用があるので」

「何の用だ俺も行く」

「なんでですか」

「やめろ」

「何をですか」

「そうだ小田、マンゴーあるぞ」

「私別にマンゴーめちゃくちゃ好きってわけじゃないです」

「泣くぞ」

「マンゴーがですか」

「俺が」

「なんでだよ」


思わず普通に突っ込んでしまった小田は「ハッ」とした顔をして「ナンデデスカ」と言い直したがそれはもう遅いのだ。そして、天への怖さより面倒くささが勝ってる時点でお前はこっち側の人間だ。