狂気のお姫様

「ということなので」

「ということなので、じゃないわ!!なんだそのやばい女は!!」

授業の眠りから覚め、ぎゃんぎゃん吠える小田をどーどーと落ち着かせる。


「ま、小田なんて名前そこらへんにいっぱいいるだろ」

「その女に遭遇したらお前のこと教えとくな」

「クズが」


あのあと、あの直子という女はふらふらと来た道を帰って行った。このまま攻撃してきそうなぐらいやばい顔をしていたが、すんなりと帰って行ったのが逆に怖かった。

鳴さんとホッと胸を撫で下ろしたものの、いや、胸を撫で下ろす前にしっかりとクソ男に蹴りは入れたが、あの女の人絶対何か仕掛けてくると思う。

まぁでも私の顔は一瞬しか見えてないはずだし、黒髪ストレートなんていっぱいいると思うし、そもそも小田と名乗ったので大丈夫なはず。

それに『小田 律』は顔に大火傷を負っているしね。


鳴さんはと言うと、「あー、あとは律ちゃんがなんとかしてくれる」などと戯言を言っていて、まじで頭おかしいんじゃないかと思った。

こんなことなら話しかけなきゃ良かった、と自分の運の悪さを心底恨む。



「いやもうまじで怖かった」

「東堂が怖がるなんて珍しいな」

「見たことない生き物は誰だって怖いだろ」

「人間だよ。きっとその人、人間だよ」

「ホラー見てるみたいだった」


ホラー映画は怖いだろ。あんな青白くて瞳孔開いた生き物なんておばけしかいない。

「おばけは生き物ではないけどな」

「黙ってほしい」



私の代わりに襲われろ、と思うが、小田は惜しくも茶髪なのだ。

いや、待てよ?


「染めればいいんだ」

「お、仲間入りか?」

「今日帰ってから染めようかな」

「私が染めてやるよ」

「先生、ちょっと不安なんですけど」

「私ができないのは勉強だけだ任せろ」

「潔すぎて引くわ」


なんだかんだ小田の髪の毛は綺麗に染められているし、任せようかなとは思う。

ということで、本日わたくし東堂律、髪の毛染めます。



「染めたことあんの?」

「ない」

「デビューっすね」

「非行少女って言われないかな」

「どんな色にするつもりだよ」

「やっぱ派手に赤とか」

「笑う」

「もはや髪の毛も切りたいな」

「ショート?」

「ボブくらい」

「えー、ロングで赤だったら完全に二次元なのに東堂」

「どういうこと」

「オタクに騒がれそうってこと」

「なんか怖い。赤やめよう」

「じゃあ青」

「変わらねぇじゃねぇか」

「まぁ最初は無難に茶色系がいいんじゃね」

「陽ちゃんと一緒の色にしようか」

「あー、あの色いいよね。アッシュか」

「あんまり目立たないけど可愛い」

「如月さんにどれ使ってるか聞いときなよ」

「あーい」


と、女子高生みたいな話をしながら、ホラーな一日が終わり、あっという間に下校時間。

陽ちゃんに何を使ってるかばっちりメールで聞いたので、今から小田と買いに行くのだ。