狂気のお姫様


だめだこの女。想像以上に話が通じないし頭が狂ってる。あくまで鳴さんは自分のことを好きだと思っているもよう。

このクズ男、なんて女を製造したんだ。


「ごめんね。俺が好きなのは直子さんじゃないよ」

「あぇっ」



グイッと腕を引っ張られ、バランスを崩す。


そして、柔らかい何かが頬に当たった。



「本気でこの子を好きなんだ」

「…」





こいつ!!!!!!!!

私のほっぺに!!!!!

キスしやがった!!!!!!!!!!!!!!


「うぉい!!!!!」

顔を覆っていない方の手で鳴さんにストレートを決め込む。


「いでっ、ごめんって。つい☆」


小声でお茶目出してる場合かクソヤロウ!!!


「なんてことしやがるクズ!!!」

「どうしようもう敬語も使ってくれなくなっちゃった」


使うか!!!私を巻き込みやがって!!!ふざけるなよ!!


「助け合いが必要でしょ?」

「私のことを助けてくれることあるんすか」

「ん?」


殺してやる。




「鳴くん」


キスの衝撃で頭がプチパニックを起こしていたが、直子さんのやけに静かな声に、そちらに目を向ける。


「あー…これは…」

「めちゃめちゃ怒ってるじゃないですか」


口元には笑みを浮かべているが、そこから漏れる殺意が目に見えるほどだ。


「本当なのね?そうなのね。そうなのね。大事な人の幸せだもの。ちゃんと応援しなきゃね。そうなのね」


やだもう怖いんだけど。


「ねぇ、あなた、さっきから顔を隠してるけど、どんな顔をしてるの???名前は??学年は??」


誰が名乗るか。


「律だよ」

ゴスッ

今の音は鳴さんの脇腹に左フックをお見舞した音である。

まあまあの強さでやったので、声も出せず悶絶している様子。


この人バカか。バカなのか。もはや私にこの女を排除させようとしてないか。ていうか楽しんでないか。バカなのか。


「へぇ、律ちゃんって言うのね。苗字はなんて言うの?」

「小田です」


鳴さんに先に言われないように違う名前を言ったが、


「…」



うん、小田ごめん。



名前を呼び慣れしすぎているせいで、いざ偽名を使おうとすると、一緒にいる人の名前が出てきてしまった。


「お、小田…ククククッ」

鳴さんはというと、直子さんにバレないように下を向いて笑ってやがる。


「へぇ〜、小田律さんていうのね。そうなのね」

「は、はぁ…」

「なんで顔を隠してるの?」

「あーえー、昔大火傷したときの傷が残ってるんです」

「顔に火傷…。へぇ〜そうなのね。そうなのね」



………この人、絶対後日私のことを探し出すつもりだろ。