狂気のお姫様

脳が判断する前に体が先に動いた。

咄嗟に顔を下げ、片手で覆う。


「鳴くん……鳴くん…?…誰?その女誰なの?」



あ、ほんとにやばい人だ。これはほんとにやばい人だ。
手足は怒りやら驚きやらでワナワナと震えており、瞳孔はかっぴらいている。

一応容姿は綺麗にしているものの、その肌は青白く、健康的には見えない。

ていうか制服が違う。ということは他校の生徒だ。不法侵入じゃないか。



指の間からチラリと鳴さんに目を向けると、


「…」

えっ死んでる?

目を瞑って考えることを放棄してやがる。



「じゃ、そういうことで」

なるべく面倒事に巻き込まれたくないので、顔を隠したままスッと退散を試みるが、ガシッと腕を掴まれてそれは阻まれた。


「無理です」

「俺も無理」

「無理ですってばアレは」

「律ちゃんならいける」


アホ言うな。


「なんで顔隠してんの」

「いや顔見られたらアウトな気がして」

「頭いいね」

「顔バレしたらあとつけられて殺されそう」

「律ちゃんならいける」


アホ言うなって。





「なに2人でコソコソ喋ってるの…?」

かっぴらいた目がギョロリと動くのがホラーすぎて、人間とは思えない。


「鳴くん…?なんとか言ってよ???」

「鳴さんなんとか言ってくださいよ」


横からボソッと茶々を入れると、軽く肘打ちをされた。

そしてとんでもないことを言い出した。



「直子さん、ごめんね。この子、俺の彼女なんだ」





「は?」

もちろん今の『は?』は私である。

何を言ってるんだこの男は?彼女?私が?誰の?お前の?


「は、何言っムグッ!!」


私を巻き込むなコノヤロウ!!の意を込めて反論しようとするも、大きな手で私の手ごと顔面を押さえつけられてそれは叶わない。


「……は????かの…じょ………?」


一拍遅れて直子さんとやらのリアクション。

信じられないとでも言うように目を開き、唇は震えている。


「嘘でしょ……?鳴くん?」

「ごめんね?本当に最近、付き合いだしたんだよ」

大嘘言うな!!!

「なんで?鳴くんは私のことが好きなんでしょ?でも鳴くんは照れ屋さんだからいろんな女と遊ぶフリしてたんだよね?そうでしょ?あ、もしかしてその女も私を妬かせるための道具?そうだよね?なぁんだ。なら許してあげる。だからこっちにおいで。ほら。ね?」



えっ、こわ〜〜〜〜!!!!!!!!!!!