「聖さん、着きましたよ」

1年ぶりの別荘を懐かしく見ながら、芽衣は優しく聖をゆすり起こす。

「ん……。え、ごめん!俺ずっと寝てた?」
「うん。お疲れだったから、寝られて良かったです。早く中に入りましょ」
「ああ」

部屋の中は遠隔操作で暖房が入れられていて、食料品も理事長の計らいでたくさん届いていた。

「わあー、すごい!なんて素敵なところなの」

初めて来た弥生は、広いリビングを見渡してうっとりと頬に手を当てる。

「弥生ちゃん、このピアノ24時間いつでも弾いて大丈夫なんだよ」
「えー、なんて贅沢!」
「でしょ?久しぶりに二人で思い切り弾こう!」
「うん!」

早速楽しそうにピアノを弾き始めた二人を、公平と聖はキッチンから微笑ましく見つめる。

公平は夕食の準備をしながら、コーヒーを淹れている聖に話しかけた。

「なあ、聖」
「ん?」
「去年ここで合宿した時は、まさか1年後にこんなふうに幸せになってるとは、想像も出来なかったな」

聖は顔を上げて芽衣達を見ながら頷く。

「ああ、そうだな。しかも俺達二人一緒に幸せになれるなんてな」
「うん、奇跡みたいだ」
「確かに」

その時、連弾しながら芽衣と弥生が楽しそうな笑い声を上げた。

聖と公平は目を細めて二人を見守る。

最愛の人を見つけられた奇跡に感謝しながら、この先もずっと愛し続けよう。

どんな時もこの手で守り、必ず幸せにしよう。

二人は改めてそう心に誓っていた。

「公平」
「なんだ?」
「これからも毎年正月にはここに来よう。俺達四人で」

公平は聖の横顔に目をやり、嬉しそうに笑う。

「ああ、そうだな。そのうちに家族が増えてもな」
「うん。一緒に遊ばせよう。賑やかにな。ヴァイオリンとピアノも弾いてさ」
「音楽好きな子になるかな?」
「なるよ、きっと」

聖は改めて公平と向き合った。

「公平、これからもよろしく頼む。長いつき合いになると思うからさ」
「こちらこそ。お前の音楽と一緒にいられるなら本望だ。家族共々、末永くよろしくな」
「ああ」

二人はしっかりと頷き合った。