そして、納得させることができないまま、オリンピック当日になってしまった。



今回のオリンピック開催地はスペイン。



あれから穂風とは普通にしてる。



けど、穂風から大会の話が出ることはなくなって。



俺からその話しをしようとしてもすぐに表情を変えるので、結局何もできなかった。



今日は大会初日。



「頑張れよ」

「うん! いってきます」



穂風の頭をぐしゃぐしゃに撫でて送り出す。



まずは初日の1回戦・2回戦目。



穂風はいつもの調子で軽く波を乗りこなす。



1回戦・2回戦は余裕で突破した。



愛姫と悠星、そして杉下真恋も突破。



「夏葉くん、飯奢って」

「悠星、お前2回戦突破くらいではええぞ」

「だって俺がオリンピック出られただけで奇跡じゃん」

「奇跡じゃねえよ。お前頑張ってんだろ」



悠星は、かなりギリギリのところでオリンピック出場権を勝ち取った。



1年くらい前まではでかい大会でメダルも取ったことなかったのに、まじですごいと思う。



紛れもなく悠星の頑張りだ。



「優勝したらなんでも食わせてやるよ」

「ケチだな。今奢ってほしいのに」

「おい…」



俺たちがそんなやりとりをしてたら、愛姫がやってきた。



「ユウセイ、ナツハ、ひさしぶり!」



愛姫は5月の世界大会が終わってからアメリカに帰国した。



会うのは3ヶ月ぶりだ。



日本語も上達してる。



「ゲンキだった?」



愛姫が悠星を見て言う。



「ん。お前は?」

「あたしもゲンキだった!」



なんとなく2人の空気が良い感じだ。



俺はいない感じ?



ほっとこう…。



それより穂風のところ行く。