「失礼します」



中居さんが入ってきて、料理を机に並べ始めた。



そわそわしてたら、足下に穂風の浴衣の帯が落ちてるのを発見…。



慌てて拾って隠す。



仲居さんが不思議そうな顔をしたので、笑って誤魔化した。



料理を全て並べ終わり、仲居さんが部屋から出てく。



いなくなったのを確認した俺は、風呂場のふすまを開けた。



「穂風、もういいぞ」



ふすまを明けると、穂風は湯船の中で眠ってた。



その寝顔に思わず笑ってしまう。



今日は疲れたよな…。



でもこんなところで寝たら風邪引くぞ…。



穂風の頭を一撫でして、穂風を起こした。



2人で飯を食って、布団を敷いて。



「おやすみ夏葉…」

「ん、おやすみ」



一つの布団の中、穂風をぎゅっと抱きしめて眠った。




そして、ついに世界大会の日がやってきた。



穂風はもう決まってるけど、一部の選手にはオリンピック出場権もかかってる。



会場は不思議な高揚感に包まれていた。



機材の準備が終わって浜を見渡して、穂風を見つける。



穂風はいつも通り緊張の顔。



その隣には、最近MAKANAとの契約も決まった杉下真恋。



穂風ほど緊張した顔はしてない。



でも、穂風も最近調子良いの続いてるし、割と自信あるって言ってたし。



アジア大会も優勝したばかりで。



あとはプレッシャーとどう戦えるかだ…。



だけど、結果は芳しくなかった。



優勝は、今年日本で花枝さんからコーチングを受けてた愛姫。



杉下真恋選手は3位。



穂風は…4位だった。



近年は調子が良くてずっと3位以内をキープしてた穂風が4位陥落。



しかも、日本ではもう何年も首位を譲ってなかったのに、杉下真恋についに抜かされてしまった。



穂風は明らかに動揺した顔で。



自信あったのにその成績だったから、余計に動揺してると思う…。