Anonymous〜この世界にいない君へ〜

アノニマスは顔を真っ赤にして捲し立てるように言った。紫月はニヤリと笑い、アノニマスの手を引いて歩き出す。

「ならカラオケに行こう!楽しいところだ!」

この近くのカラオケは駅前の店舗が一番近い。紫月はアノニマスと一緒にいられることに胸を弾ませていた。

「お前、どんな歌を普段聴くんだ?」

手を引かれたままアノニマスが訊ねる。紫月は少し考えた後、「流行りの歌はとりあえず聴くようにしている。だから音楽番組で流れるような曲は知っているぞ」と返した。学生時代、流行のものは友達との話題のために頭に入れておくようにしていたのだ。

「そういうお前は歌は聴くのか?」

紫月が訊ねる。駅が近付く。今日は駅前で何かイベントが行われているらしく、いつもより人の流れが多く感じた。

「あたしはーーー」

アノニマスが答えようとしたその時だった。轟音が耳を劈く。何が起こったのか紫月は最初理解できなかった。煙と焦げた臭いが鼻につく。反射的に閉じていた目を開ければ、地面に数人が倒れていた。