Anonymous〜この世界にいない君へ〜

「芥川さんは反対してましたよ。でも、上の人たちが「事件を解決するには多少の犠牲だってあるものだ」って強引に跳ね退けて」

「芥川さんはこの作戦に反対なのか」

紫月はそれを聞いて安堵していた。修二は人の命を誰よりも重く感じている。その信念を上の立場の人間にもぶつけることができることに、紫月は憧れと尊敬を感じているのだ。

「まあ、捜査一課の方針がそうと決まったなら仕方がないな。爆弾が爆発する前に逮捕してもらうことを祈るしかない」

紀人が顎に手を当てながら言った。その顔は一段と険しい。部屋の空気がどこか重くなっていく。紫月は、まるで酸素の薄くなった空間にいるような息苦しさを感じ始めた。その時、彰が「はい!」と手を挙げる。

「夏目!爆弾の構造とかどんなものか会議で話してた?」

「あっ、そういえば話してました!」

蓮は手帳を捲り、メモした内容を話し出す。爆弾は時限制でタイマーがゼロになったら自然と爆発する。しかし、その爆弾は特殊な薬品が使われているようだ