Anonymous〜この世界にいない君へ〜

「あの人と二人きりは嫌だったとはいえ、太宰を巻き込んでしまった申し訳ない。今度、スイーツビュッフェでも何でも奢る」

「いや、別にそんな気を使わなくていい。俺も色々あったから少し気晴らしがしたかったんだ」

「色々?事件か」

「ああ……」

アノニマスは試着室へと入った。衣擦れの音がカーテンの向こうから聞こえてくる。紫月の胸が音を立てていく。二、三分ほど経った頃にカーテンがゆっくりと開いた。

「どうだ?」

タータンチェックのコートワンピースだ。秋らしい色合いである。紫月は見惚れてしまい、言葉が口から出て来なかった。

「太宰、このワンピース似合ってるか?」

アノニマスがゆっくりと近付いてくる。紫月は慌てて「に、似合っている!チェック柄が秋らしくていいな!」と感想を言った。アノニマスは満足した様子で試着室の中へと入る。アノニマスがカーテンを閉めてから、紫月は気になったことを訊ねた。

「新作が出るたびにこうして店に足を運んでいるのか?」

「ああ」