Anonymous〜この世界にいない君へ〜

「あなた!!いつまで翡翠の腕を掴んでいるつもり!?」

苛立ちを一ミリも隠そうとせず、千秋はずんずんとこちらに近付いてくる。紫月は慌てて「姪っ子さんが俺の腕を掴んでいるんですが」と釈明したものの、千秋には全く届かなかった。

「だから何!?離れなさい!!」

「叔母さん、落ち着いてください。太宰刑事にもついて来てもらいます。それなら買い物は安全でしょう」

アノニマスは千秋の元へ行き、何やら説得をしているようだ。紫月は、アノニマスの買い物に千秋が無理やりついて行こうとしているのだと悟った。

アノニマスは必死に説得しているものの、千秋の顔は真っ赤なままだ。首を何度も横に振る。

「ダメよ。絶対にダメ。ここ最近、東京は物騒だわ。連続爆破事件に童話殺人事件。どちらの事件も犯人がいくら罪を抱えた人だったとしても、翡翠が巻き添えを喰らわないという保証はどこにもないのよ!!」

千秋の言葉に、目の前にある可憐な女性の目が一瞬海外の強いアノニマスのものに変わる。紫月も、先ほどの発言に何か違和感を感じていた。