Anonymous〜この世界にいない君へ〜

「被害者のご遺体は?」

「まだ現場にある。今、法医の先生が遺体を見ているところだ」

紫月は遺体の状態を見ることにした。修二に礼を言って爆破された部屋へと向かう。焼け焦げた階段を上っていくと被害者の部屋が見えてくる。玄関のドア付近に遺体は倒れていた。幸成が遺体に触れ、真剣に考え込んでいる。

「幸成、お疲れ様。どうだ?」

「紫月、夏目刑事、お疲れ。遺体は見ての通りこの部屋の中で倒れていなきゃ、一体誰なのか判別できない状況だよ。まあ解剖するけど」

幸成は遺体から手を離して立ち上がる。蓮が「俺、部屋の様子を見てきます」と言い爆破された部屋の奥へと入っていった。それを見届けた後、幸成が紫月に小声で言う。

「夢野泰造と夢野快児殺害事件なんだけど、遺体にあるものが付着していたんだ」

「あるもの?」

「化粧品だよ。今、どこの化粧品メーカーのものか調べてる」

紫月は驚いた。これまで、「童話殺人事件」には何一つとして手がかりが残されていなかった。迷宮入りの完全犯罪だったのである。