Anonymous〜この世界にいない君へ〜

(俺は悪くない!悪いのはあの女だ!フラフラ歩きやがって。誰だってクマかと思って撃つだろ)

拳を枕の上に叩き込む。怒りは収まらない。しかし、ここは拘置所である。多少暴力を振るうことに慣れた少年など、あっという間に押さえつけられてしまう場所だ。快児はここに来た初日にそれを嫌というほど叩き込まれている。

(ここを出たら、あの女の墓を荒らしてやろう。俺は被害者だ。それくらいする権利があるんだよ!!)

自由になった後のことを考え、快児は怒りを鎮めようとする。口角が上がっていった。頭の中には壊れた墓石と絶望する遺族の顔が浮かんでいる。

(そうだ。俺はこんなところで終わる男じゃないんだ。……自由になったら、また好き勝手に生きてやる!!)

その時、ガチャリと檻の鍵が外れる音がした。快児が顔を上げると厳重に閉められたはずのドアが開いている。

「えっ……何で開いてるんだ……」

快児はゆっくりとドアの方に近付いていく。そして、その頭の中で「これは自由になるチャンスなのでは」と考えた。喜びが溢れていく。