Anonymous〜この世界にいない君へ〜

2022年 10月1日 東京都葛西区 午後10時

拘置所は静まり返っている。月明かりが檻の中をぼんやりと照らしている。檻の中のベッドの上で、夢野快児は横になっていた。しかし、その両目はしっかりと開いている。

快児は全く眠くなかった。しかし、拘置所という場所は時間で全てを管理されている。眠る時間も自由時間も決められている。夜中まで遊び回っていた快児にとっては、全てが苦痛で堪らなかった。

(クソ!こんなことになったのも、全部あの女のせいだ!あの女があんなところにいなかったら俺は……!!)

苛立ちが込み上げてくる。暴れたい衝動に駆られ、快児は布団を強く握り締めた。今まで当たり前だった自由はここにはどこにもない。ファストフードを食べることはできず、ゲームを好きな時に好きなだけすることはできない。ここに連れて来られてから、快児は苛立ちばかりが募っていた。

福沢亜美を殺害・死体損壊・死体遺棄の容疑で快児はここにいる。父親の泰造も、息子の罪を隠蔽しようとした罪で逮捕されている。