Anonymous〜この世界にいない君へ〜

「俺は自分の子どもがいないので、芥川さんの気持ちの全てを理解することは難しいかもしれません。でも、家族を失うことはとても悲しいことだということはわかります。俺にできることがあれば、何でも仰ってください。捜査一課からは外されましたが、あなたが俺の憧れであることに変わりありませんから」

紫月が胸の中にある思いを包み隠さず話すと、修二の寂しそうな目にほんの少し優しさが混じる。修二は枝豆を口に放り込んだ。

「太宰、ありがとう。今度の旅行の土産を奮発しよう。他の奴には内緒だぞ」

「あ、ありがとうございます」

修二は明日からアメリカへ旅行に行く。アメリカは娘が行きたいと言っていた場所らしく、妻と一緒に行くそうだ。幸い捜査一課は今は大きな事件を抱えていないため、旅行を楽しめるだろう。

日付けが変わるまで二人は居酒屋で飲んだ。帰り際、修二は紫月に言う。

「太宰、お前はいい刑事だ。綺麗な心といい目を持っている。俺みたいに道を踏み間違えるな。正義を貫き続けろ」

「あ、芥川さん?」