Anonymous〜この世界にいない君へ〜

慌てて紫月は否定する。アノニマスの方を見るのが怖かった。チラリと横目でアノニマスを見る。彼女は表情一つ変えずに微笑んでいた。それに対し、胸の中で安堵と痛みが混じり合う。

「ところで太宰さん、事件って何なの?僕何にも聞いてないんだけど。翡翠先生は知ってるわけ?」

真夜がどこか不満げに紫月を見る。アノニマスはコーヒーを飲み、「少しだけ太宰刑事から聞きました」と答えた。真夜がテーブルに肘をつく。

「太宰さん、僕には事件のこと教えてくれないわけ?僕、天才ハッカーだよ。何か事件解決のヒントになることが与えられるかもしれないのにな〜」

「わかったわかった。一から話す」

パフェを食べながら紫月は福沢亜美の事件と捜査状況を話せるところだけ教えた。紫月が口を閉ざすと、アノニマスが遠慮がちに手を挙げる。

「太宰刑事、被害者が殺害されて解体されたのはその遺体が発見された山なんでしょうか?」

「遺体があった場所や遺体の入っていた袋にはそれほど血液がなかった。恐らく、別の場所で殺害・解体をされた可能性が高いと鑑識が言っていたな」