Anonymous〜この世界にいない君へ〜

紀人が捜査資料を閉じて訊ねる。紫月と蓮は碧がコーヒーを淹れてくれるのを待ち、全員に義夫から聞いた話を教えた。全員の顔が暗くなっていく。

「喧嘩してそのまま永遠に会えなくなったのか……。後悔はすごいだろうな」

彰が推しアイドルのぬいぐるみを撫でながら言った。碧と尚美も頷く。

「犯人に繋がりそうなものは残念ながら何もありませんでした」

亜美の部屋なども見せてもらったものの、ごく普通の女の子の部屋でトラブルがあった様子なども見られなかった。紫月が報告を終えると、紀人が腕組みをしながら「手がかりはゼロか……」と眉間に皺を寄せる。義夫に犯人に心当たりはあるかと訊ねたものの、彼は「知らない」の一点張りだった。

「でも、仮にトラブルがあったとしても中学生が殺害してあそこまで解体できるとは思えません」

蓮が真剣な表情で言う。確かに普通の中学生ならば、人を殺害した時点で動転し、遺体の処理にまで手が回らないだろう。しかし、蓮に紫月は言う。