Anonymous〜この世界にいない君へ〜

「映画、とてもよかったな」

紫月が映画を思い出しながら言うと、アノニマスも「ああ。たまにはほのぼのした映画もいいものだ」と頷く。そこからお互いに気に入ったシーンなどを話した。

「俺はやっぱり強盗を悪戯で撃退するところだな。あんな激大砲ならされた側も笑ってしまうだろう」

「あたしはみんなで夕食を食べるシーンだな。普通の家庭がどんなものかわからないが、些細な出来事で笑える家庭は幸せだ」

その時、ふとアノニマスが紫月の飲んでいるジンジャーカプチーノを見つめた。赤と白の可愛らしいドリンクで、注文している人もそれなりに多い。

「どうした?」

「そのジンジャーカプチーノ、可愛らしいな」

「ああ。クリスマスまでの限定販売らしいぞ」

街はクリスマスツリーやイルミネーションで彩られ、まだ少し先だというのにクリスマスに浮かれている。紫月がジンジャーカプチーノに口をつけると、アノニマスが「一口飲んでもいいか?」と訊いた。紫月の顔が一瞬にして赤く染まる。

「は?ほ、本気なのか?結構甘いぞ」

「わかったる。一口だけ挑戦してみたい」