Anonymous〜この世界にいない君へ〜

そう言うとアノニマスは「行こう」と歩き出す。紫月は彼女の隣に並び、「どこへ行くんだ?」と話しかけた。彼女は一言「映画館」とだけ答える。

「映画館?」

「見たい映画があるんだ」

アノニマスはそう言って微笑んだ。紫月はミステリーやスプラッター系の映画を観るのではないかと身構えたものの、予想に反してアノニマスが購入したチケットは洋画のコメディ系のものだった。それは紫月が観たいと思っていた映画である。

「ドリンク、買いに行くぞ」

アノニマスはどこか楽しそうにそう言った。紫月も「ああ。ココアが飲みたいな」と笑った。すぐに「こういう時はブラックコーヒー一択だろう」と返ってくる。

ほとんど一ヶ月連絡が取れなかっただけなのに、紫月はこのやり取りがとても懐かしく感じた。それと同時に愛おしくもある。映画のチケットを握り締め、紫月とアノニマスはドリンクを買うために列に並んだ。



映画が終わった後、紫月とアノニマスの姿はカフェにあった。紫月はミルクと苺のジンジャーカプチーノとキャラメルカスタードクレープを、アノニマスはブラックコーヒーとオムレツを口にしながら映画の感想を話す。