Anonymous〜この世界にいない君へ〜

「童話殺人事件」の犯人が逮捕され、警察官たちは毎日忙しなく動いた。被疑者を起訴するための取り調べ、証拠品の押収、家宅捜索、書類作成、マスコミ対応、することは山のようにある。

足と腕を負傷した紫月はしばらく病院に入院することになったものの、あまりの忙しさから優我と智也から「書類作成くらいは寝ながらでもできるだろう」と嫌味と共に仕事を貰うほどだった。

(アノニマスは元気にしているだろうか……)

病室にいる間、紫月はずっとそのことばかりを考えていた。彼女は被害者として事情聴取などを受けているはずだ。アノニマスとは連絡が取れていない。紫月は聞きたいことがずっと胸の奥にあった。

(あの時、アノニマスから翡翠に変わったのは何故なんだ?)

千秋を殺そうとしたアノニマスを止めるかのように翡翠に意識が変わった。今まで紫月は翡翠になった状態を見たことがない。それが気になって仕方なかった。

アノニマスとようやく連絡がついたのは、十二月に入ってしばらくしてからのことだった。紫月も退院し、「童話殺人事件」の方もようやく片付いてきた時のことである。

『今度、一日一緒に出掛けてくれないか?』