Anonymous〜この世界にいない君へ〜

「早くアノニマスのところへ行かなきゃならないんだ……!」

紫月の呟いたその一言を、レオポルトは聞き逃すことがなかった。「ほう」と呟き、引き金を引く手を止める。

「あの女専属の騎士というわけか。諦めろ。どうせお前たちはここで死ぬ」

レオポルトが引き金を引く。放たれた銃弾が紫月の頰を掠った。痛みと共に頰に温かい血が伝っていく。

「太宰さん!」

蓮が慌ててポケットからハンカチを取り出し、「ほっぺに当ててください」と紫月の頰に押し付ける。ズキズキと傷が傷んだ。

「夏目、俺のことは構うな」

「人はすぐ死ぬんですよ!?」

蓮の大きな瞳から涙が溢れた。紫月の胸が締め付けられるような感覚を覚える。しかし今はよそ見をしている暇はない。

「人はすぐに死ぬか……。それは事実だな。この弾丸が心臓や脳を貫けばお前たちは即死だ」

レオポルトが口角を上げる。初めて彼の表情が変わった。それに対し、紫月はゾッと寒気を感じた。まるで狩りを楽しむ獣のように思えたのだ。