Anonymous〜この世界にいない君へ〜

「あなたが泉先生を誘拐した犯人ですか!?誰ですか!?今すぐ泉先生を解放しなさい!!」

蓮が千秋を睨み付ける。彼は千秋とアノニマスーーー否、翡翠との関係性を知らない。真夜がチラリと顔を覗かせて口を開く。

「あんた、尾崎千秋でしょ。民事裁判から刑事裁判まで幅広く受け持って勝訴に導いてきた有名弁護士。まさか有名事件をこんな有名人が犯してたなんてね」

「弁護士!?」

冷静な真夜とは逆に蓮は大きな声を上げる。紫月は息をゆっくりと吐いてから言う。

「尾崎は泉翡翠の叔母だ。……薄々違和感はあったが、こんなところで答え合わせをするとは思わなかった」

紫月の言葉に千秋は眉をぴくりと動かした。

「違和感?私はあんたと親しく会話をすることはなかった。ボロを出すわけないじゃない」

「いや、一度だけあった」

紫月はあの日を鮮明に頭の中に思い浮かべる。アノニマスの買い物に付き合った時だ。彼女は確かにこう言った。「童話殺人事件」と。