2015年 11月4日 午後7時半 東京都世田谷区
その日、千秋はケーキの入った箱を片手に早足で弟夫婦の家へと向かっていた。今日は姪っ子である翡翠の誕生日だ。可愛い姪っ子の誕生日を祝おうと、仕事が終わってすぐにパティスリーに駆け込んだのだ。
(アポ無し訪問だけど、お祝いのためだしいいよね。どうせなら驚かせちゃおう)
弟夫婦の家の合鍵は非常時に備えて持っている。千秋は家の鍵を音を立てないように気を付けながら開け、家の中へと入った。暗い廊下を進んでいくと、明かりのついたリビングが見える。
千秋がリビングのドアを思い切り開けようとした時だった。誕生日には不似合いな英二の重い声が耳に届く。
「……翡翠が解離性同一性だというのは知っていたよ。もう全ての人格は翡翠の中に取り込まれたと思っていた。まさか、まだいたなんて」
「あたしが最後の一人だ。翡翠の中で最初に生まれ、翡翠に最悪な結末が起こらないようにあの二人を排除した。あの事件はおろか、あたしの存在翡翠本人は知らないがな」
その日、千秋はケーキの入った箱を片手に早足で弟夫婦の家へと向かっていた。今日は姪っ子である翡翠の誕生日だ。可愛い姪っ子の誕生日を祝おうと、仕事が終わってすぐにパティスリーに駆け込んだのだ。
(アポ無し訪問だけど、お祝いのためだしいいよね。どうせなら驚かせちゃおう)
弟夫婦の家の合鍵は非常時に備えて持っている。千秋は家の鍵を音を立てないように気を付けながら開け、家の中へと入った。暗い廊下を進んでいくと、明かりのついたリビングが見える。
千秋がリビングのドアを思い切り開けようとした時だった。誕生日には不似合いな英二の重い声が耳に届く。
「……翡翠が解離性同一性だというのは知っていたよ。もう全ての人格は翡翠の中に取り込まれたと思っていた。まさか、まだいたなんて」
「あたしが最後の一人だ。翡翠の中で最初に生まれ、翡翠に最悪な結末が起こらないようにあの二人を排除した。あの事件はおろか、あたしの存在翡翠本人は知らないがな」

