Anonymous〜この世界にいない君へ〜

アノニマスはぼんやりと薄汚れた天井を眺めていた。縛り付けられているため、何もすることがない。時間の流れがいつもよりずっと遅く感じる。

(あの男、あたしの写真を誰に送り付けたんだろうか)

養子縁組をした泉夫妻だろうか。しかし、アノニマスは直感で泉夫妻ではないと思っていた。これはただの誘拐事件ではないと脈打つ心臓が告げている。

(あの男の目は、普通の誘拐犯のものではなさそうだった。あれはまるでーーー)

アノニマスの体が震えた直後、ドアが軋んだ音を立てる。誰かが部屋に入って来た。ドアを開けた人物を見て、アノニマスは驚くことはなかった。心の奥底で「こうなのでは」と推測していたことと同じだったためだ。

コツコツと足跡を立て、その人物はアノニマスに近付いてくる。そしてアノニマスの口に咬まされていた布が外され、話せるようになった。

「こんにちは」

話しかけてきたその人物に、アノニマスは怯えた演技をする。

「どうして?どうしてこのようなことをするんですか?叔母さん!」