Anonymous〜この世界にいない君へ〜

紫月の頭にアノニマスの少しぎこちない笑顔が浮かぶ。彼女が殺害される。そう考えるだけで、紫月の指先は一瞬で氷のように冷たくなっていく。

(どうか、間に合ってくれ……!)

紫月は拳を握り締めて駐車場まで走る。そして車を猛スピードで走らせた。



渋谷は平日だというのに人で賑わっている。紫月は真っ先にレインコートの映った街頭モニターを見つけた。その周辺に何かあるのではないか、と必死に探す。

(これは……!)

花壇に大きめの茶封筒が落ちていることに紫月は気付いた。封筒を拾うと、マジックペンで大きく「無能な警察官へ」と書かれている。すぐに紫月は茶封筒を開けた。一枚の紙が中には入っている。紙にはこう書かれていた。

『昔々  あるところに お妃様が いました  お妃様は 願いました  雪のように 肌が白く 唇は血のように  赤く  髪は 黒檀のように黒い 可愛らしい子が  生まれますようにと  その願いは叶い お妃様は  女の子に 白雪姫  と名付けました』

所々不自然な空白がある。紫月は息を吐き、目を閉じる。頭を空っぽにし、余計な考えを排除していく。

(落ち着け。この暗号はきっと、落ち着いたら解けるはずだ)

紫月はゆっくりと目を開ける。そして数分後、彼はある場所へと向かって走り出した。