Anonymous〜この世界にいない君へ〜

誘拐の目的といえば、真っ先に浮かぶのは身代金だ。しかし、それはあり得ないとアノニマスは真っ先に否定した。

(泉夫妻よりあたしの方が稼ぎがある。営利誘拐なら泉夫妻を誘拐してあたしを脅した方がいい)

人身売買、臓器売買、結婚目的……。思い付く可能性を考えたものの、どれも引っ掛かりを覚えるものばかりだ。

(そもそも、こんなことをした犯人は一体誰なんだ?)

アノニマスが身じろぎをするたびに縄がギシギシと軋む。その時だった。部屋のドアガゆっくりと開いた。

「ッ!」

入って来たのは外国人の男だった。歳は三十代に見える。長い銀髪を三つ編みに結んでおり、手にはカメラがあった。何をするつもりだとアノニマスは警戒し、男を睨み付ける。

男はアノニマスにカメラを向けた。そして何枚もカメラで縛り付けられた彼女を撮影する。最初はレンズを睨み付けていたアノニマスだったが、無表情で撮影され続けることに居心地の悪さを感じ、俯いた。その間も撮影は続く。