Anonymous〜この世界にいない君へ〜

狙撃というものは、単純に人に弾を当てるものではない。銃口の方向や風の影響なども細かく計算しなければ弾を当てられないのだ。

男はスコープを覗く。ターゲットが刑事に連行されていく。揺れることのない頭部に狙いを定め、引き金を引く。放たれた銃弾はターゲットの頭を難なく貫き、ターゲットは地面に倒れる。それを確認した後、男は素早くビルの屋上から立ち去った。

ビルの非常階段を降りていく。ビルの非常階段を降りた先に車を止めてある。しかし、男は足を止めた。車の近くに女が立っていた。腕組みをした彼女は無表情で、何を考えているのかわからない。

「あいつの始末は?」

「もう終わった。死んだよ」

「そう」

男は車まで移動する。誰かに見られる前に背負っているライフルを片付けなければならない。

「……後悔しているか?あいつを始末したこと」

ライフルを後部座席に乗せながら男は訊ねる。女はすぐに首を横に振った。