Anonymous〜この世界にいない君へ〜

「大丈夫……ではないな。気が済むまでここにいろ」

アノニマスの顔がはっきりと見える。彼女の大きな目は優しいものだった。その瞬間、紫月の目から涙が溢れた。頰を伝った涙がスーツのパンツやソファを濡らしていく。紫月の口から声が漏れた。

子どものように泣きじゃくる紫月を、アノニマスが抱き締める。紫月は体をアノニマスに預けた。彼女の薄い胸に頭を押し付け、ただ涙を流す。

殺人に手を染めた警察官の死を悲しむなど、刑事としてあってはならないことなのかもしれない。それでも、紫月の頭に浮かぶ修二は、優しい顔をした頼れる先輩だった。

「芥川さん……!」

修二が殺人に手を染めたことが悲しい。それと同時に殺人に手を染めていた彼をもっと早く止められなかったのか、気付けなかったのか、そんな自身に対する怒りもあった。

アノニマスに抱き締められながら、紫月は泣き続けた。