Anonymous〜この世界にいない君へ〜

葬儀の間、参列した修二の親戚と思われる人物たちがヒソヒソと話しているのを聞いた。修二の妻には終始、怒りを含んだ目、好奇の目、恐れを抱いた目が向けられていた。殺人は、罪を犯した本人だけでなくその家族までもが非難される。家族まで殺人犯と同じ扱いを受けるのだ。

(芥川さんの奥さんは何も悪くないのに……!)

紫月は拳を握り締め、地獄のような葬儀の時間を耐えた。

葬儀場を出た後、紫月は重い足取りで自宅へと帰っていた。頭の中では、「申し訳ありません」と頭を下げ続ける修二の妻の姿が離れない。行き場のない感情に、 紫月は葬儀場で何も言えず、蓮に何か話しかけられたような気がしたが、聞こえなかった。

「芥川さん……」

名前を呟く。憧れを込めて、何度もこの名前を呼んだ。修二は多くの捜査員から信頼され、紫月を含む多くの後輩刑事が彼を慕っていた。そんな彼の姿は、もうどこにもない。憧れや信頼すら、修二からは消え去った。まるで最初からなかったように。