Anonymous〜この世界にいない君へ〜

目の前で命を落とした修二の名を紫月は呟く。全てが夢であってほしかった。しかし、修二はもうこの世界にはいない。

『紫月、こんな時に言うのはアレだけど……』

修二の遺体を法医学研究所に運ぶためにマンションに来た幸成は、言いにくそうに口を開いた。夢野親子の体に付着していた化粧品のメーカーが特定された。その化粧品はアメリカにしか売られていないものだった。

アメリカの化粧品を修二は持っている。修二が持っている化粧品を調べれば、遺体に付着したものと同一かどうかはわかるだろう。

紫月はただ俯いていた。「未解決捜査課」の部屋にいる誰も言葉を発することはない。どう紫月に声をかけるべきかわからないのだ。真夜も沈黙を貫いている。

「孔雀」

重い空気の中、アノニマスがポツリと呟いた。彰が「孔雀?」と聞き返す。部屋の空気が少し変わった。アノニマスは無表情のまま続ける。

「芥川刑事が起こした一連の事件には、目撃者などは誰もいなかった。真実を知っているのは犯人サイドの人間だけ。その犯人サイドの一人が殺害された。……この意味がわかりますか?」